2025.05.13
AI面接とは?メリットや導入時の注意点・ポイントを詳しく解説
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AI(人工知能)に関する技術は日々速いスピードで発展が続き、ビジネスシーンにおける利用や将来的な可能性も拡大の一途をたどっています。採用面接においてAIを活用する「AI面接」も広がりを見せており、公平な面接の実現や採用工数の削減などへの期待から、注目が高まっています。
この記事では、主に企業の人事・採用担当者へ向けて、AI面接の概要・メリット、さらに、導入するにあたっての注意点・ポイントや、導入を進める際のステップなどについて、詳しく解説します。
AI面接とは
AI面接の概要
AI面接とは、文字どおりAIを活用して行われる面接のことで、さまざまな場面で利用可能ですが、特に企業の採用面接を指して用いられることが多いのが現状です。日本でもさまざまなAI面接サービスが登場しており、面接それ自体、また、面接の分析・評価などをAIが担うようになっています。
AI面接は現在、新卒・中途や雇用形態の別を問わず活用が広がっており、主に一次面接で用いられ、二次面接以降は人が担当することが多いとされています。ただ、アルバイト・パートタイム採用のように少ないプロセスで採否が判断される場合には、AI面接のみでの選考となることもあるでしょう。
AI面接が広がる背景
技術やサービスの普及・浸透により、採用面接のオンライン化が進み、応募者は移動の負担なく面接を受けられる機会が広がりました。これにより、企業側は応募者数の増加を期待できるようになった反面、採用にかかる業務量は増しています。また、採用活動の長期化や中途採用の拡大も、採用担当者の負担増加につながっています。
一方、AIの技術発展は目覚ましく、データ処理の量はもちろんのこと、その精度も日増しに向上しています。AIを活用することで、業務の効率化・負担軽減につながるほか、人の目や力では及ばなかった範囲にも対応を広げられることが期待され、書類選考など、採用業務においてAIを活用する場面やそのためのサービスも広がりを見せています。
採用業務全般におけるAIの活用については、下記の記事にまとめていますので、あわせてお読みください。
AI採用とは? 採用業務においてAIを活用する具体的な場面やメリット、留意点を解説
さらに、対話型AIの技術の進歩により、AIとの間でのより自然な対話の実現も可能となっており、面接にAIの技術を活用することの可能性や有用性も大きく広がりました。採用業務においてAIを活用することが有力な選択肢の一つとなる中で、その対象が面接にも及ぶようになっているのです。2024年10月に実施したAI面接に関する意識調査では、人間の面接官よりもAI面接官のほうが「公平に判断される」「緊張せずにのぞめる」との結果が出てもおり、社会的な受け入れの土壌が形成されつつあることも窺えます。
参照:https://peoplex.jp/news/H7pSbcxV
AI面接を活用すると、人ができていた以上の質・量の業務をAIに委ねることができ、その分、人は人にしかできない業務により多くの時間を割くことが可能となります。人材獲得競争が増す中で、より多くの人材との出会い、より自社にマッチした精度の高い人材の採用を期待できることから、注目が高まっています。
AI面接の仕組み
AI面接の具体的な仕組みは、サービスやプランによって異なりますが、一般的には以下のような流れがとられます。
オンラインで面接
応募者は、パソコンやスマートフォンを利用し、指定されたURLにアクセスしてオンラインで面接を受けます。
面接では、システム上で事前に複数の質問が用意されており、応募者が質問に回答していく様子を録画します。質問は、各企業が自由にまたは選択して設定できることが多く、企業によって異なるのが通常です。英語や中国語など、日本語以外の言語に対応可能なサービスもあります。
AIによる分析
面接後、AIによりデータの分析がなされます。事前に登録されたエントリーシート、履歴書、職務経歴書などの内容、また、録画をもとに音声認識システムでテキストデータとされた回答内容から、スキルや経験のレベル、論理性などが分析されます。さらに、応募者のコミュニケーション能力のほか、意欲や集中力なども分析することが可能です。
評価レポートの生成
AIによる分析結果が、同じくAIによりレポートの形に生成されます。レポートでは、応募者の回答内容やコミュニケーションの様子などについての分析がまとめられ、またサービスによっては採用基準ごとの評価の提示もなされます。採用担当者は必要な情報をわかりやすく確認できるのに加え、人の目では見落としていたかもしれない点に気づける可能性もあります。
選考
面接の録画データとテキストデータ、評価レポートを参考に、次の過程に進む応募者を選考します。この判断は、AIに委ねるのではなく、採用担当者が行います。AI面接は便利なツールではあるものの、あくまでも工程の一部を補うものであると捉え、最終的な採否の判断は人が行うのが適切です。
AI面接と通常の面接との違い
AI面接が登場し広がりを見せているとはいえ、人による通常の面接がすべてAI面接に置き換わることはないでしょう。それぞれどのような特徴があり、どのように活用するとよいか、確認しておきましょう。
方法
AI面接は、一般的にはオンラインで実施され、場所の制約がありません。また、人が対応するものではないため、多くのサービスでは、時間の指定もなく、応募者の都合の良いときに面接を受けることができます。
通常の面接は、オンラインで実施されるケースもありますが、オフィスなどで対面で実施されるケースもあります。対面の場合、画面越しではわかりにくい雰囲気を直接感じ取ることもできる、応募者は実際にオフィスの様子を知ることもできる、といったメリットがあります。また、AI面接は一般的に応募者ごとに個別に行われますが、通常の面接では、グループ面接が実施されることもあり、この場合、一度に多くの応募者を選考できる、コミュニケーション能力や協調性といった集団ならではの評価軸を設けることもできる、といったメリットもあります。
目的
AI面接には、後に見るようにさまざまなメリットがあり、多くの場合、企業・応募者双方の負担軽減や、公平な面接の実施といった目的のために導入されます。
とはいえ、人による通常の面接で、より良く目的が達成される事柄もあります。たとえば、社風や企業文化との相性(カルチャーマッチ)をより深く見極めたり、応募者の意思を確認したりすることは、AIが一部を担うことも可能ではあるものの、人が行うことになお意味があります。また、企業の魅力や価値観を応募者に伝え、入社意欲につなげたい局面でも、AIが担うこともできるものの、社員との接点を設け、直接の対話を行うほうがより効果的でしょう。
評価
通常の面接では、数値のみにとらわれない、人による柔軟な見極め・判断が可能です。しかし無意識のうちに主観が介在したり評価に偏りが生じたりする可能性が否定できません。
他方、AI面接では、事前に設定された基準やアルゴリズムに基づいて、機械的に評価がなされます。画一的となってしまいかねないという面はあるものの、偏見や曖昧さが排除された状態で評価がなされる良さがあると言えるでしょう。
AI面接の種類
AI面接のサービスは、大きく分けて以下の2種類のものがあります。
録画型
事前に設定された質問に答える様子を応募者が録画し、その録画データをAIが分析するというものです。録画するところまでは、いわゆる録画面接(動画面接)と同様ですが、AI面接では回答内容やコミュニケーション能力などを人ではなくAIが分析・評価します。
対話型
面接において、単に応募者が回答するだけでなく、AIが応募者と対話するというものです。録画型と異なり、応募者の回答を受けて、その場でAIがさらに質問を投げ返す、いわゆる深掘り質問も行われます。応募者と対話するAIの見た目は、デジタルヒューマン(AIや3DCG技術を用いて作られる、人間の姿をしたキャラクター)のもの、音声や文字だけのものと、サービスによって違いがあります。
なお、以上のような実際の選考に用いるためのサービスのほか、AI面接の練習に特化したサービスもあります。AIによる分析・評価結果をもとにしたアドバイスを受けることもでき、応募者は、AI面接に慣れておくことができるほか、実際の面接に向けた対策をとることができます。
AI面接のメリット
AI面接には、通常の面接と異なる特徴から、以下のようなメリットがあります。
- 採用業務にかかるコストや負担を軽減できる
- 時間・場所を問わず実施できる
- 公平な面接を実施できる
- より多角的・広範な評価を得られる
- 応募者の好感を得られる
採用業務にかかるコストや負担を軽減できる
AI面接では、面接そのものはもちろん、面接結果の整理・分析など、面接に関する業務の多くをAIが担うため、人の稼働時間を大幅に少なくすることができます。採用担当者は、得られたデータをもとにした判断に注力することができ、他の採用業務、とりわけ人にしかできない業務に充てる時間を増やすことが可能となります。
また、従来面接のために外部の会場を手配していた場合には、そのための費用(会場費や交通費)が不要となり、時間的コストだけでなく金銭的コストの削減にもつながります。
時間・場所を問わず実施できる
AI面接は、多くのサービスで、応募者が希望するときにいつでも面接を受けることが可能とされており、企業・応募者双方にとって、日程調整の負担がなくなります。
また、面接はオンラインで実施されるため場所を選びません。たとえば、これまでであれば面接のために遠隔地から足を運ぶ必要があった応募者も、移動の負担がなく面接を受けられるようになります。
時間・場所の制約がないことで、応募者としては面接を受けやすくなり、辞退の可能性も低くなることが考えられます。企業としては、より多くの求職者に自社の面接を受けてもらうことができるメリットがあります。仮にこれまで対応可能であった人数を超えた応募数となったとしても、業務の多くはAIが担い、人の稼働を抑えた体制をとれるため、対応していくことも可能でしょう。
公平な面接を実施できる
人による面接の場合、面接官が複数いる場合に、人によって評価の異なりが生じるといったおそれがあります。また、人間同士である以上、相性の良し悪しがあることも考えられ、それによる不公平さが生まれる可能性も否定できません。
しかしAI面接では、どの応募者に対しても共通のシステムが対応にあたるため、その懸念がありません。無意識の偏見や思い込みが加わることもなく、一貫した基準の下で統一的・均質な面接が実施され、データに基づく客観的・公平な評価がなされます。
より多角的・広範な評価を得られる
採用選考フローのうち、これまで人による通常の面接を実施していたところを、負担軽減や効率化のために、AI面接に置き換えるという運用の仕方も考えられますが、それだけでなく、通常の面接の実施は維持したまま、AI面接を追加したフローにするということも可能です。
このような方法をとると、通常の面接のみでは対応できなかった数の面接も行えるようになる、人による評価だけでなくAIによる客観的・公平な評価も加味して判断することができるようになる、といったメリットが得られるでしょう。
応募者の好感を得られる
AI面接で応募者は人と接することがなく、選考過程は無機質なものとなります。しかし、かえってそのほうが緊張せずに面接にのぞめると考える応募者もいます。初対面の人と話すのが苦手な人も、気後れすることなく、自分の本質をより伝えやすくなるでしょう。また、ハラスメントや「圧迫面接」のようなことも考えづらく、公平な評価がなされることへの安心感や、新しい技術を導入している会社だという良い印象を応募者に抱いてもらえるとも考えられます。
AI面接のデメリット
AI面接には、企業・応募者双方にとってさまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。
- 学習データに基づく偏りが生じるおそれがある
- 判断には一定の限界がある
- 抵抗感を抱く応募者もいる
学習データに基づく偏りが生じるおそれがある
AI面接では、システムが事前に備えている学習データやアルゴリズムに基づいて評価が行われます。仮にデータが十分なものでなかったり偏りがあったりすると、アルゴリズムが意図せず不公平なものとなり、AIが導き出す評価も偏りがあるものとなってしまうおそれがあります。
たとえば、男性のデータが豊富にある一方で女性のデータは限られている、A大学の出身者はB大学の出身者と比べて入社後のパフォーマンスが平均的に高いことがわかっている、といったデータの状況に依拠すると、女性やB大学の出身者は、個人として能力が高くても正当な評価がなされない可能性があります(統計的差別と言われる問題です)。
判断には一定の限界がある
AIは客観的・公平な評価を行うものの、その効果がより強く発揮されるのは定量的に見ることが可能なものや十分に言語化されたものについてだと言えます。そうでないものについては、少なくとも現在においては、得意であるとは言いづらく、評価がなされたとしてもその適否を人が判断することが難しい場合もあります。
また、AIの評価は、事前に設定した基準や過去のデータに基づいてなされるため、これらにあてはまらない特別な才能やスキルを持った人が、低い評価となってしまう可能性もあります。画一的な評価であることで、人材の多様性から遠ざかってしまうおそれがある点に注意が必要です。
抵抗感を抱く応募者もいる
AI面接に好感を持つ応募者もいるとはいえ、すべての応募者がそうであるわけではありません。AI面接では、応募者は企業側の反応を窺うことができず、十分にアピールできたかどうか、不安につながりやすいと考えられます。また、AIが用いられることで、自らの情報がどのように扱われるかや、どのような判断がなされるかがわからず、抵抗感を抱く人もいるでしょう。
AI面接を活用する際の注意点
上記のとおり、AI面接にはデメリットがあることも否定できず、導入する際はこの点を踏まえた対応が求められます。具体的には、以下の点に気をつけましょう。
- 応募者に十分な説明をする
- 最終判断は人が行う
- 適切にデータを取り扱う
応募者に十分な説明をする
AI面接は、すべての応募者に歓迎されるとは限りません。また、AI面接に抵抗のない応募者であっても、どのような選考がなされるかは大きな関心事です。
企業としては、あらかじめ、選考過程にAI面接を組み込んでいることの目的や、AIによる評価の活用方法、最終判断は人が行うことなどについて、応募者にわかりやすく伝えておくのが望ましいと言えます。また場合によっては、AI面接と人による通常の面接を応募者が選択できる運用としておくこともよいでしょう。
最終判断は人が行う
AIは膨大な情報の整理・分析を担ってくれるとはいえ、評価の正しさや性質について懸念や限界が全くないわけではありません。あくまで人の判断を補助するツールとして用いることとするのが適切です。
また、採用選考フローの中にAI面接を追加するのではなく、通常の面接をAI面接で置き換える場合には、応募者と社員が接する機会が減ることとなります。社員自身が応募者に直接会社の魅力を伝えたり入社意欲を高めてもらうための取組を行うなどして、最後は人同士で関係を築くことを意識できるとよいでしょう。
適切にデータを取り扱う
AI面接では、応募者の履歴書・職務経歴書に記載された情報のほか、応募者自身が話した内容、さらに顔や声についてもデータ収集がなされ、多くの個人情報を取り扱うこととなります。評価結果を含め、応募者の個人情報が万一にも漏洩することのないよう、データの暗号化やアクセス制限といった適切な管理の措置をとることが求められます。
また、どのような情報を収集するかを明確にし、必要な範囲や目的を超えた情報の収集・保管は行わず、応募者には事前の説明と同意取得の手続をとるといった対応が必要です。AI面接の実施にあたっては、単にシステムを導入するだけでなく、十分な理解と体制が必要であることを、あらかじめ踏まえておかなければなりません。個人情報保護法のほか、「AI事業者ガイドライン」や、2025年の通常国会に法案が提出されているいわゆる「AI法」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)を受けた国内のルールに関する動向にも、注意を払いましょう。
参照:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」(令和7年3⽉28⽇)
AI面接の導入ステップ
実際にAI面接を導入することとなった場合、以下のステップで進めると、スムーズ・適切な運用を実現できるでしょう。
- 導入目的・範囲の明確化
- 運用体制の構築
- 目的や運用体制に合ったサービス選定
- 実施、結果の活用
- 効果検証、運用改善
以下、順に確認していきます。
導入目的・範囲の明確化
やみくもにAI面接を導入するのではなく、目的をもって活用することが効果につながります。まず、自社の採用計画や採用体制を確認し、課題や改善の余地がどこにあるのかを把握しましょう。「書類選考から一次面接に進む人数を増やしたい」「面接にかかる工数を削減したい」「AIの評価も加味したい」などが考えられます。その上で、何のためにAI面接を活用するのか、採用プロセスのどの段階でAI面接を活用するのかを決定します。最初は新卒採用での活用から始め、運用が定着してきたら中途採用での活用にも拡大する、といった段階を踏むこともよいでしょう。
求める人物像の明確化も必要です。人材要件が明確になることで、どのような場合であれば高い評価となるかなども具体的にすることができ、AI面接の評価基準の設定や、評価をもとにした判断において、スムーズに進めることが可能となります。
運用体制の構築
AI面接を導入する際は、従来の採用プロセスに変化が加わることとなります。導入後のプロセスを具体化し、採用担当者の役割分担を決定しましょう。また、新たなシステムに適切に対応できるよう、システム担当者の配置も検討することが望ましいと言えます。各担当者は、AI面接の導入目的と活用方法、メリット・デメリットを十分に理解し、社内での合意形成を行うことも求められます。
目的や運用体制に合ったサービス選定
AI面接のサービスには複数のものがあるため、後述のポイントを参考に各サービスを比較し、自社の目的に適したものを選ぶとよいでしょう。
サービスが決定した後は、テスト運用を行うことも大切です。本番運用が始まった後に不明点や混乱が生じないよう、担当者を中心として社内で実際に使ってみましょう。操作性や結果の出力のされ方などを確認するとよいでしょう。
その際、社員が応募者役となりAI面接を受けてみることで、応募者の立場での気づきも得るようにすることも有用です。本番運用では応募者に対しどのような案内や配慮が必要かを把握し、ウェブサイトやメールの文面を整備するなど、必要な準備を行います。必要に応じて運用体制の調整も行い、十分に準備をした上で本番運用を迎えましょう。
実施、結果の活用
本番運用が始まったら、サービス上のシステムを利用して、面接結果を確認しましょう。事前に構築した体制のもとで、録画・テキストデータや評価レポートをもとに合否の判断を行い、選考プロセスを進めます。また、AI面接の評価内容を、次の面接での追加の質問につなげたり、採用後の配属の参考情報にするといった場合にも、データ・レポートを適切に活用できるよう、準備を進めていきましょう。
効果検証、運用改善
AI面接を導入した採用プロセスがひととおり終了したら、振り返りを行い、事前に定めた目的が達成されたかどうか、効果を検証しましょう。面接を受ける人数や工数など具体的な数値目標を定めていた場合は、その期における達成度を検証します。また、中長期的には、採用後のミスマッチの有無や定着率、活躍度合いなども検証し、AI面接の活用がどのような効果を及ぼしているかを確認するとよいでしょう。
検証の結果、運用に課題が見つかった場合は、改善策を検討しましょう。AI面接で設定する質問や評価基準を調整したり、評価の確認体制を見直したりするといったことが考えられます。
AI面接導入時のポイント
最後に、AI面接を導入する際にチェックしておきたいポイントについて取り上げます。以下の3点を確認しましょう。
- 採用選考フロー全体を確認する
- サービスの比較ポイントを押さえる
- AIやシステムについて理解する
採用選考フロー全体を確認する
AI面接を導入する際は、自社の採用選考フローのどの段階でAI面接を活用するのか、また、AI面接で得られた情報をその後の採用選考フローの中でどのように用いる(あるいは用いない)のか、といった点を明確にしておく必要があります。これらが不明確なままサービスの導入だけを進めても、かえって混乱することになりかねません。AI面接を導入することで、日数や担当者に変更の必要が生じないかどうかも確認しておきましょう。
また、どの部門・ポジションで何名の人員が必要なのか、どのような人物を採用したいのか、といった点(人材要件)も具体的にしておくことが重要です。これにより、自社に必要な評価基準を設定し、より効果的にAI面接を実施していくことができます。
サービスの比較ポイントを押さえる
AI面接を導入する際は、自社に適したサービスを選ぶことが大切です。以下のポイントを確認し、選定できるとよいでしょう。
- 自社の課題・目的に合っているか
- 評価への信頼性
- 透明性
- セキュリティ対策
- 操作性・使いやすさ
- 応募者体験(候補者体験)
- 費用・価格形態
自社の課題・目的に合っているか
AI面接の導入にあたり、事前に課題を洗い出した上で、AI面接の導入目的や活用範囲を明確化し、それらに応える機能が備わっているか否かを確認しましょう。たとえば、録画型・対話型のどちらがよいか、AIが評価する評価基準は自社で必要なものを満たしているかなどを確認することが考えられます。
ただし、どのような情報でもすべてが評価の基準や対象に含まれていればよいとは言えません。この後見るように法律上規制されているものがあるほか、声色や表情といった本人には如何ともしがたい事柄も評価に影響することは望ましくありません。サービスがどのような方針で設計されているかについても選定時に留意するとよいでしょう。
評価への信頼性
AI面接を用いる際は、AIが出力した評価も加味して採用の判断を行っていくこととなります。そのため、出力される評価は、参考とするに足るものである必要があります。導入前のトライアルが可能であれば、出力された評価に不足や違和感がないかどうかも確認できるとよいでしょう。
確認のポイントとして、プライバシー侵害が起きるおそれがないかどうか、また特に、採用選考において企業が把握・収集すべきでないとされている事項が含まれるおそれがないかどうかも重要です。
まず、人種や信条、社会的身分、病歴といった特定の情報については、本人の同意なしに取得してはならないとされています(個人情報保護法20条2項)。また、面接で尋ねるべきでないことを尋ねた場合、違法行為となる可能性があります(職業安定法5条の5)。この場合、厚生労働大臣による業務改善命令が行われる可能性があり、この命令に違反したときは罰則(同法65条第8号。6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の適用があるため、注意しましょう。
参照:https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
透明性
AIは、出力までのプロセスが非常に複雑で、ブラックボックス化してしまった場合、なぜそのような評価がなされたのかについて人には判断がつきかねることとなるという問題点も指摘されます。こうした状況を避けるためには、サービス側において検証可能性が確保されているかどうかや、合理的な情報提供や誠実な対応が担保されているかどうかが重要です。上述した「AI事業者ガイドライン」、またその土台にあたる「人間中心のAI社会原則」でも言及されている点であり、これに沿ったサービス運営がなされているかどうかを確認するとよいでしょう。
参照:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」(令和7年3⽉28⽇)
参照:統合イノベーション戦略推進会議決定「人間中心のAI社会原則」(平成31年3月29日)
セキュリティ対策
事業者が取り組むべきこととして、セキュリティの確保についても、「AI事業者ガイドライン」「人間中心のAI社会原則」で指摘がされています。システム上の問題や外部からの攻撃・不正操作等に十分に対応できるサービスであるかどうかが重要です。自社で採っているセキュリティ対策との整合性があるかどうかも確認したい点であると言えます。
操作性・使いやすさ
導入後は、担当者がシステムの画面操作を行うこととなります。使いづらさや不明点が多く生じるようであれば、かえって業務負担が増してしまいます。担当者の操作や評価の閲覧のしやすさ、動作の安定性など、使いやすいシステムであるかどうかを確認するとともに、サービス提供企業のサポート体制についても確認するとよいでしょう。
応募者体験(候補者体験)
担当者にとっての操作性・使いやすさだけでなく、面接を受ける側にとっての操作性・使いやすさも重要です。良いサービスを導入しているかどうかは、応募者が企業に対して抱くイメージにも直結します。動作の安定性のほか、応募から面接を受けるまでの一連の流れの中で不明点が生じたりしないかどうか、面接時の会話が違和感のないスムーズなものかどうか、といった点が重要です。応募者に対する事前の十分な情報提供が可能な体制となっているかどうかといった点もポイントと言えます。
費用・価格形態
サービスごとの費用・価格形態を確認し、自社に必要な利用の仕方に適したものかどうかを判断しましょう。自社の課題解決にとって必要以上のコストをかけることにならないかどうか、安価であっても必要な機能が不足していたりしないかどうかを確認していくことになるでしょう。
AIやシステムについて理解する
AI面接は多くのメリットもある便利なものではありますが、手放しに信頼するのではなく、先述したとおり、限界もあることを正しく理解しておかなければなりません。採用担当者は、トレーニングや研修を受けている場合が多いと考えられますが、自社で用いるシステムだけでなく、AIの特徴や限界、最新状況についても、理解しておくべき内容に含めるべきでしょう。
また、上述した個人情報保護法やAI法、「人間中心のAI社会原則」、「AI事業者ガイドライン」など、AIに関するルールは複数存在し、今後も整備が続けられていくものと考えられます。法規範に関してもよく理解した上で、適切に活用していくよう努めましょう。
まとめ
AI面接は技術の進歩により有用性が高まっており、企業・応募者の双方にとって大きなメリットをもたらしてくれます。ただ、AI面接を活用するかどうかを問わず、採用は応募者の人生を左右するものです。この意識をあらためて持ち、AI面接を活用する場合にはさらに気をつけたい点があることに留意することが必要です。
信頼・安心のできるサービスを選ぶとともに、特徴やルールを十分に理解し、AIと人の役割分担を明確にした上で、適切な運用を図っていきましょう。

この記事を担当した人
PeopleX コンテンツグループ
人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。
これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。
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